貝類(軟体動物・貝類)の部位名称図
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Vepricardium(s. s.)okamotoi Taguchiの特徴 現生種に付いて 産状に付いて 相対成長に付いて まとめ

このページは、田口栄次先生が岡山県勝田層群から見出した二枚貝化石、Vepricardiumの一種をVepricardium(s. s.)okamotoi Taguchiとして新種記載され、その後複数の固体より各所部位の測定統計を試み、その測定結果及び産状・岩相・隋伴種などから検討した生息環境等を表した論文、田口栄次:西南日本岡山県の中新統勝田層群からのVepricardiumの一新種古生物学会報告紀事、第160号、609-617頁、(1990)
を頂いた折、内容の面白さとこの二枚貝化石に対する私個人の思い入れから、論文の内容を田口栄次先生の許可の元抜粋させて頂き翻訳・着色させて頂きました。
特記事項表記された内容は、英文記載の論文の翻訳内容をそのまま使用せず、小中学生を対象に極力分かり易くする為、専門用語を出来る限り省き私なりに解釈を加えた文面で有る事を明記しておきます。



Vepricardium(s. s.)okamotoi Taguchiの特徴

図 @
論文図7より抜粋した拡大画像であるが画像右側上部の殻後付近の放射肋を良くご覧頂きたい。
良く見ると放射肋上に沿って黒点状の突起(刺)が有ることを確認出来る。
Vepricardium kyushuense ShutoなどのVepricardiumの類にはこの様な突起(刺)が殻前・殻後の放射肋に有することが知られており、現生種においては、殻全体の放射肋に突起(刺)を有することが現在までに知られている。
Vepricardium(s. s.)okamotoi Taguchi
の特記すべき特徴として、この放射肋上の突起(刺)が殻後付近のみ有する点及び、放射肋の本数がが他の種より44〜52本と非常に多く溝が浅いことが上げられる。
追  記
画像下部中央の円形の穴は、ツメタガイなどタマガイ科の肉食性巻貝によって生息時に開けられた痕跡と思われる。
(田口、1990)Figure7より抜粋。

図 A
参考のため、図 @にグラフィク処理を施し、突起(刺)の位置を示してみた。
(田口、1990)Figure7より抜粋着色。

図 B
現在所有する標本の殻後付近の拡大画像。
放射肋の突起(刺)を赤線の楕円で囲んでみた。
風化の磨耗によりあまり顕著ではないが、確認して頂けると思う。
画像をクリックすれば更に拡大された画像になります。
(田口、1990)Figure7と同じ部位の拡大画像。

 現生種  Trachycardium(Vepricardium) multispinosum (Sowerby,1841)に付いて。

産状に付いて。
図 C
化石産地図
1982年、岡山県津山市新田地内樺テ山大崎瓦の工場拡張工事において、旧工場西側山林の宅地造成工事が行われた。
その工事による西側山林掘削時に、貝類、甲殻類及びサメの歯などの種が判明したものだけでも60種以上、個体数も無数と言って過言でない数が発見された。
当時休日と成れば、運転免許を取得したばかりの私は、外国旅行にでも行くような心持で採集に行ったものである。
岡山県津山市新田(樺テ山大崎瓦工場敷地内)赤矢印
(田口、1990)Figure1より抜粋翻訳。
産地の特徴
この産地の特徴として、
Vepricardium(s. s.)okamotoi Taguchiをはじめとした貝類9種(内8種が田口栄次先生によるもの)、甲殻類2種が瑞浪化石博物館の柄沢博士によって新種として記載された大変意義の有る興味深い産地で有った。
当時、工事状況にもよるが、雨上がりの日などバケツ一杯もの化石が採集できたが、残念な事に現在ここは新しい工場も建ち、まったく以前の面影も無く絶産である、ただ東1kmの池ヶ原地内で現在も採取可能と聞いている。
津山市新田産出化石表
図 D
地層図
記号8の位置より採集された。
現地では、記号1の泥岩中より多種無数の化石が、各種共まとまって(分布)採集された。
又、 産状も広範囲に及んだ。
この事は
Vepricardium(s. s.)okamotoi Taguchiも同じく、当時の生育分布を知る上で、非常に興味の有る産状だった。


相対成長に付いて。

図 E
Vepricardium(s. s.)okamotoi Taguchiは宮崎層で産出されたShuto(1960)によるVepricardium kyushuenseに最も放射肋の形状及び貝殻サイズでこの種に似ています。しかしながら前者は、殻全、殻後部分が大きく、殻後のみに顆粒およびより小さい刺を所有し、放射肋の数とそのより丸い貝殻によって後者から区別できます。また、広島県庄原市の備北層群から産出されたOtuka(1938)によるCardium(Bucardium)oguraiとこの新種と比較すると、C.(B.)oguraiは放射肋の数が少なくより殻のふくれている形状しています。
(田口、1990)Figure2及び3より抜粋し再図化。
図 F
図 Eに示した各測定部位の相対関係図
殻長:殻高 殻幅:殻高
大小さまざまな大きさの個体数十個を測定し求められた数値。
(田口、1990)Figure4及び5より抜粋し再図化。
2つの図では相関関係数(r)がどちらの図においても略1.0に近いこと、勾配(α)の誤差が0.9・・と少なく
略1.0に近いことから、殻長(L)と殻高(H)また殻幅(T)と殻高(H)は、幼形からおとなの個体まで略1:1
の比率で成長しことか分かる。これをいわゆる等成長と呼んでいる。
このことは、Vepricardium(s. s.)okamotoi Taguchiの特徴で、成長様式と言える。



まとめ。
Vepricardium(s. s.)okamotoi Taguchiの特徴として、田口先生の論文を引用抜粋させて頂き、数々の説明をして
きましたが特記すべき点は、このベプリカディウム オカモトイ(オカモト ザルガイ)は、成長過程において等成長する二枚貝
であるという事です。
簡単に述べれば、例えばシャボン玉を膨らます過程で、小さな球から大きな球に膨らませても容積は変わりますが形は全く
変わらない事と同じ意味を表しています。
この様な等成長をする貝類として、現生種としてタマガイの類と中生代白亜紀のイノセラムスが知られているに過ぎない程、
顕著な特徴である関係から、今後の化石採集において種の同定の重要なポイントと成ります。

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