鉱物の不思議


福島県耶麻郡西会津町宝坂
Opal      (オパール)
蛋白石
     
珪酸塩鉱物
SiO2・nH2O  非晶質
緑色・赤色・青色等様々な色彩を楽しませてくれる。
結晶水の影響によりこの様な光の屈折が起きると言われている。

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宮沢賢治『銀河鉄道の夜』貝の火の一節より

ホモイは玉を取りあげて見ました。玉は赤や黄の焔をあげて、せわしくせわしく燃えているように見えますが、
実はやはり冷たく美しく澄んでいるのです。
目にあてて空にすかして見ると、もう焔はなく、天の川が奇麗にすきとおっています。
目からはなすと、またちらりちらり美しい火が燃えだします。
ホモイほそっと玉をささげて、おうちへはいりました。そしてすぐお父さんに見せました。
すると兎のお父さんが玉を手にとって、めがねをはずしてよく調べてから申しました。
「これは有名な貝の火という宝物だ。これは大変な玉だぞ。これをこのまま一生満足に持っている事のできたもの
は今までに鳥に二人魚に一人あっただけだという話だ。
お前はよく気をつけて光をなくさないようにするんだぞ」 、ホモイが申しました。
「それは大丈夫ですよ。僕は決してなくしませんよ。そんなようなことは、ひばりも言っていました。
僕は毎日百遍ずつ息をふきかけて百遍ずつ紅雀の毛でみがいてやりましょう」兎のおっかさんも、玉を手にとってよ
くよくながめました。そして言いました。
「この玉ほたいへん損じやすいという事です。けれども、また亡くなった鷲の大臣が持っていた時ほ、大噴火があっ
て大臣が鳥の避難のために、あちこちさしずをして歩いている間に、この玉が山ほどある石に打たれたり、まっかな
熔岩に流されたりしても、いっこうきずも曇りもつかないでかえって前よりも美しくなったという話ですよ」

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』貝の火の一節を引用しましたが、皆さんはどう感じられたでしょうか、私の下手な説明
よりずっと説得力が有り、素晴らしいオパールの表現をしています。
アマチュア鉱物学者兼天文学者でも有る宮沢賢治のオーパールに対する素直な表現に何時も感銘させられます。



佐賀県東松浦郡肥前町切木
Lanthanite-(Nd)
ネオジムランタン石
   炭酸塩鉱物
(Nd,La)2(CO3)3・8H2O 斜方晶系
放射状集合結晶をなして産出、日光下ではピンク色
蛍光灯下では写真の様にクリーム色に見える。
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蛍光灯でのラインティング撮影
白熱電球でのラインティング撮影
(日光下と同じ)

鉱物には照射する光源によって色が替わる事が知られており面白さの1つと成っています。
中でも蛍石・燐灰ウラン鉱・灰重石などミネラライト(紫外線照射器)による紫外線照射で発する蛍光は大変美しく幻想的な
気持ちにさせてくれます。(癒しの効力が有るのかもしれのせん。)
その様な鉱物の中に、ネオジムランタン石の様に特別な光が無くとも日常生活のありきたりな光源である、日光や蛍光灯
によって色が替わって見える物が有ります。
宝石の一種であるアレキサンドル石もこの類で有名です。
色替わりの原因は、光源のスペクトル(プリズムなどで分解された光を,色の移り変わる順に並べたものを,光のスペクトル
(spectrum)といいます。 )の違いから結晶構造上、人に見える光が制御され色が替わって見えると言われています。
そんな自己主張しているネオジムランタン石、とても不思議な鉱物です。



和歌山県西牟婁郡串本町田並田先ノ崎
Yoldia sp.
ヨルディアの類 (二枚貝化石)
二枚貝が化石に成る途上、貝殻のカルシウムが硫化鉱物に置換された。


一般的に貝類は化石に成る途上、貝殻のカルシウムが珪酸に置換される事が常識の様であるが、この和歌山県西牟婁郡串本町田並田先ノ崎産の
貝化石はその常識から外れてしまった面白い化石である。
漸新世から中新世に移り変わる第三紀(約2250万年前)の頁岩中のノージュールから採取される。
如何なる原因でこの様に硫化鉱物と置換されたか定かでないが、化石を取り巻くノージュール自体微量の硫化鉱物が確認出来るが、ほとんど無いと
言って良い程見当たらない。とても面白く不思議な「化石鉱物」である。
もう1つの面白さは硫化鉱物の形状で、元々が二枚貝の貝殻であるため、二枚貝特有の成長輪脈(二枚貝の成長によって出来る貝殻表面の筋模様)が
有る。それを数式と直線・角度をイメージする鉱物にも関わらず形抜きした様に見事な模様を形取っておりその上表面の欠けた部分は新鮮且つ立派な
ヘキ開面を見せてくれる。
白色部分が方鉛鉱のヘキ開面で、撮影時の蛍光灯の光に反射して白く見える、黒色部分が閃亜鉛鉱、黄色部分が黄銅鉱、この様な化石は古生物学的
にも大変珍しいものである。


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