1cm近い巨晶 |
下段逸見石発見時の晶洞画像 |
逸見石 Henmilite
Ca2Cu(OH)4[B(OH)4]2 硼酸塩鉱物 三斜晶系
論文著者 中井泉・岡田久・益富寿之助・小山栄二・長島弘三
掲載論文 American Mineralogist, 71, 1234-1239, (1986).
逸見石は銅とカルシウムを含む含水硼酸塩鉱物で、滋賀県に住む鉱物愛好家である岡田久が布賀で採集した本鉱を日本地学研究会の益富寿之助を通じて筑波大学化学科の長島弘三へ届けられ、長島と長島研究室の中井泉・小山栄二によって研究され、中井・岡田・益富・小山・長島の連名で1986年に報告された。最初に記載された逸見石は、結晶質石灰岩を切る五水灰硼石脈中の小さな晶洞中にあり、他形結晶でまれに最大0.2mmの自形結晶を示すものもあったが、微細で少量しか産しなかったために比重や硬度などは測定することができなかった。その後、1992年、岡山大学教育学部の草地功により布賀から原記載論文の産状とは異なるゲーレ石・スパー石スカルンと結晶質石灰岩の境界部に発達する方解石脈中の晶洞に黒銅鉱・シレナイト・バルトフォンティン石・クスビディン・トーマス石に伴って最大3 mmに達する厚板状の菱餅に似た自形結晶として産する逸見石が報告され、中井ら(1986)が測定できなかった比重、硬度、熱的性質、結晶形態などが明らかにされた。草地(1992)は逸見石の湿式化学分析を行い、物理的性質・化学組成・X線的性質などの項目において、中井ら(1986)が結晶構造解析から求めた理想式と、得られた実験式が良く一致することを示した。逸見石は大変もろい鉱物で,モース硬度はビッカース硬度の測定値から計算すると3となり、密度は2.51g/cm3、強熱すると黒銅鉱とカルシウム硼酸塩及び水に分解される。 鉱物名は岡山県布賀の鉱物の研究者、岡山大学の鉱物学者・逸見吉之助(1919-1997)とその二女である岡山大学の鉱物学者・逸見千代子(1949- )にちなんで命名された。