単斜トバモリ石Clinotobermorite

Ca5Si6(O,OH)18・5H2O フィロ珪酸塩鉱物 単斜晶系

論文著者 逸見千代子・草地功

掲載論文 Mineralogical Magazine, 56, 353-358, (1992).

トベルモリ石には反射面間隔が11Å、10Å、14Åのものが知られており、このうち14Åのものはプロンビエル石と呼ばれおり、10Åのものは新鉱物・大江石として承認されている。布賀産のトベルモリ石はスカルンや汚染岩を切る幅約1cmの脈として産し、大部分は通常の11Åトベルモリ石であるが、逸見千代子と草地功による再検討により粉末X線パターン(回折像)が11Åトベルモリ石と一致しないものが発見され、結晶系も他の斜方晶系とは異なる単斜晶系であることがわかり、単斜トベルモリ石と命名された。布賀の単斜トベルモリ石は方解石、11Åトベルモリ石、プロンビエル石(14Åトベルモリ石)、魚眼石と共生し、ゲーレン石・スパー石スカルン中に最大3 mmに達する板状結晶として産する。トベルモリ石と単斜トベルモリ石は同質異像の関係にある。共生するトベルモリ石の結晶が0.5 mm以下の針状結晶であるのに対し、単斜トベルモリ石は結晶の大型のものが多く、形態も一見燐珪石の結晶を思わせる板状のものがある。結晶形と結晶系の違いの他には、モース硬度と密度、屈折率に差が認められ、硬度については斜トベルモリ石が4.5、トベルモリ石が3、密度については、単斜トベルモリ石が2.51 g/cm3、トベルモリ石が2.40 g/cm3であり、屈折率は単斜トベルモリ石の方がやや高くなっている。単斜トベルモリ石は11Åトベルモリ石よりも後で低温で生じたと考えられており、対称性が低いこともこのことに矛盾しないとの事。